【メルボルン発】オーストラリアでは常識?日本人が知らない「デンタルIQ」を高める5つの新習慣 三浦さやか, 2025年8月6日2025年8月27日 最終更新日 2025年8月27日 by 三浦さやか 「あなたの歯の健康に、自信がありますか?」。そう聞かれて、迷いなく「はい!」と答えられる方は、どれくらいいるでしょうか。 日本では「痛くなったら歯医者へ行く」のが、まだまだ一般的かもしれません。しかし、私が今住んでいるオーストラリアのメルボルンでは、その考え方は少し“非常識”だと思われてしまう可能性があります。 こんにちは、元歯科衛生士で、現在は医療ライターとしてメルボルンで活動している三浦さやかです。日本の臨床現場で6年間働いた後、オーストラリアの先進的な予防歯科文化を取材する中で、日本人がまだ知らない「デンタルIQ」の重要性を日々痛感しています。 実は私自身、留学中に高額なセラミック治療を経験し、「予防こそが最良の治療であり、最高の節約だ」と身をもって学びました。この記事では、メルボルンの日常に溶け込んでいる5つの新しい習慣を、現地のリアルなエピソードや最新データを交えながらご紹介します。 世界基準のデンタルケアを知り、あなたの「当たり前」を一緒にアップデートしてみませんか? 目次1 そもそも「デンタルIQ」とは?統計で見るオーストラリアと日本の意識格差1.1 「デンタルIQ」が高い人、低い人の決定的違い1.2 データで比較!「治療の日本」と「予防のオーストラリア」2 【習慣1】フロスは卒業?メルボルンでは常識の「ウォーターピック」活用術2.1 なぜ今、ウォーターピックなのか?2.2 元歯科衛生士が教える!効果を最大化する使い方3 【習慣2】歯磨き粉は「高濃度フッ素1500ppm」が当たり前!選び方の新基準3.1 日本は周回遅れ?世界のフッ素基準3.2 現地で人気!オーストラリアの歯磨き粉と選び方のポイント4 【習慣3】治療費は日本の数倍!だから「3ヶ月に1度のプロの掃除」が経済的4.1 なぜ「3ヶ月」がゴールデンルールなのか4.2 ライターの体験談:高額請求で知った「予防」の価値5 【習慣4】美意識の高さの表れ。「審美歯科」をポジティブに選択する文化5.1 「八重歯はドラキュラ?」歯の見た目がキャリアを左右する社会5.2 話題の”Buzz Cut Zirconia”とは?最新審美トレンド6 【習慣5】歯科衛生士は「お口のパーソナルトレーナー」。専門家との新しい付き合い方6.1 オーストラリアにおける歯科衛生士の役割と地位6.2 日本でも実践!「かかりつけ衛生士」を持つメリット7 よくある質問(FAQ)7.1 Q: オーストラリアの歯科治療費は、なぜそんなに高いのですか?7.2 Q: ウォーターピックを使えば、フロスは全く必要ないですか?7.3 Q: 高濃度のフッ素入り歯磨き粉は、毎日使っても安全ですか?7.4 Q: 子供のデンタルIQを高めるために、オーストラリアではどんな教育をしていますか?7.5 Q: 日本でオーストラリアのような予防歯科を受けるには、どうすれば良いですか?8 まとめ そもそも「デンタルIQ」とは?統計で見るオーストラリアと日本の意識格差 最近よく耳にする「デンタルIQ」という言葉。なんとなくイメージはできても、具体的にどういうことか説明するのは難しいかもしれませんね。 「デンタルIQ」が高い人、低い人の決定的違い デンタルIQとは、単に歯の知識が豊富なことではありません。「お口の健康に関する正しい知識を、日々の生活で実践する力」のことだと私は考えています。 歯科衛生士時代、デンタルIQが高い患者さんは、ご自身の口の中の状態をよく理解し、私たち専門家からのアドバイスを素直に実践してくれました。一方で、知識はあっても「面倒だから」「まだ痛くないから」と行動に移せない方は、残念ながら数年後に大きなトラブルを抱えてしまうケースが多かったのです。 つまり、知っているだけでなく「予防のために行動しているか」が、決定的な違いを生むのです。 データで比較!「治療の日本」と「予防のオーストラリア」 この意識の違いは、データにもはっきりと表れています。歯科医院へ行く目的を比べてみると、その差は歴然です。 日本:虫歯や歯周病の「治療」が目的の人が多数派。 オーストラリア(など予防先進国):虫歯などがないかチェックする「定期検診」や、歯の「クリーニング」が目的の人が多数派。 実際に、スウェーデンやアメリカといった予防先進国では、成人の約70〜80%が定期的に検診を受けていると言われています。一方、日本の定期検診受診率は近年上昇傾向にあるものの、まだ追いついていないのが現状です。 メルボルンの同僚とランチに行くと、食後に当たり前のように歯を磨いている光景を目にします。彼らにとって、プロによる定期的なケアと日々のセルフケアは、特別なことではなく、健康を守るための“文化”として根付いているのです。 【習慣1】フロスは卒業?メルボルンでは常識の「ウォーターピック」活用術 「毎日のケアは、歯ブラシとフロスで完璧!」。そう思っているあなた、素晴らしいです。でも、メルボルンではもう一歩先を行くケアが常識になりつつあります。 なぜ今、ウォーターピックなのか? メルボルンのドラッグストアを覗くと、驚くほどたくさんの種類の「ウォーターピック(口腔洗浄器)」が並んでいます。水流で歯と歯茎の汚れを洗い流すこのアイテムは、なぜこれほど人気なのでしょうか。 フロスが歯と歯が接する面のネバネバした汚れ(プラーク)をこすり落とすのが得意な一方、ウォーターピックは全く違う役割を持っています。 歯周ポケット内の洗浄 矯正器具や被せ物の周りの清掃 歯茎のマッサージ効果 特に、フロスでは届きにくい部分の汚れを洗い流す力は絶大です。現地の歯科医も、歯周病予防やインプラントのメンテナンスのために、ウォーターピックの使用を積極的に推奨しています。 元歯科衛生士が教える!効果を最大化する使い方 私自身、毎朝フロスとウォーターピックを併用し、自分の口で効果を「実験」しています。その経験から、効果を最大化する使い方をご紹介しますね。 タイミングは歯磨きの前がおすすめ:最初に大きな汚れを水流で吹き飛ばすことで、歯磨き粉の成分が隅々まで行き渡りやすくなります。 水圧は「弱」からスタート:いきなり強い水圧で始めると、歯茎を傷つけたり、痛みの原因になったりすることも。慣れるまでは一番弱い水圧から試しましょう。 洗面所で、少し前屈みになり口を閉じて使う:口を開けたままだと、水が飛び散って大変なことになります(笑)。口を閉じ、水が自然に口から流れ出るようにするのがコツです。 フロスとウォーターピックは、どちらかが優れているというものではなく、それぞれに得意な役割があります。両方を使いこなす「ダブルケア」で、プロレベルのセルフケアを目指しましょう。 【習慣2】歯磨き粉は「高濃度フッ素1500ppm」が当たり前!選び方の新基準 毎日使う歯磨き粉、あなたは何を基準に選んでいますか?味やブランドで選ぶことが多いかもしれませんが、オーストラリアでは「フッ素濃度」が最も重要なチェックポイントです。 日本は周回遅れ?世界のフッ素基準 実は、日本で市販されている歯磨き粉のフッ素濃度の上限が1500ppmに引き上げられたのは、2017年のこと。それまでは1000ppmが上限でした。 しかし、オーストラリアや欧米では、この1500ppmがスタンダード。虫歯予防におけるフッ素の効果は科学的に証明されており、世界保健機関(WHO)も利用を推奨しています。 高濃度のフッ素は、歯の表面のエナメル質を修復し(再石灰化)、歯を酸に溶けにくい強い性質に変えてくれる働きがあります。世界のスタンダードを知ると、歯磨き粉選びの基準も変わってきませんか? 現地で人気!オーストラリアの歯磨き粉と選び方のポイント メルボルンのスーパーや薬局には、様々な種類の高濃度フッ素配合歯磨き粉が並んでいます。パッケージの成分表示で「Sodium Fluoride 1500ppm」といった表記を探すのが基本です。 知覚過敏が気になる方:硝酸カリウムなどの成分が入ったタイプ 歯の着色が気になる方:ホワイトニング効果を謳ったタイプ 歯周病が気になる方:殺菌成分が配合されたタイプ など、自分の悩みに合わせて選ぶことができます。海外製品を使う際は、6歳未満のお子さんには使用を控えるなど、注意書きをよく確認してくださいね。 【習慣3】治療費は日本の数倍!だから「3ヶ月に1度のプロの掃除」が経済的 「歯医者さんには、できれば行きたくない…」。その気持ち、よく分かります。でも、オーストラリアの人々が熱心に定期検診に通うのには、非常にシビアで経済的な理由があるのです。 なぜ「3ヶ月」がゴールデンルールなのか なぜ、3ヶ月に1度のクリーニングが推奨されるのでしょうか。それは、歯石や、細菌の塊である「バイオフィルム」が、歯磨きでは落とせないレベルまで成長するのが、およそ3ヶ月だからです。 この頑固な汚れをプロの手で定期的にリセットすることで、虫歯や歯周病を根本から予防できます。病気の早期発見・早期治療にも繋がり、結果として生涯にかかる医療費を大きく抑えることができるのです。 ライターの体験談:高額請求で知った「予防」の価値 何を隠そう、私自身がオーストラリアで「予防」の価値を痛感した一人です。留学中、日本で治療したセラミックの詰め物が取れてしまい、現地の歯科医院で作り直すことになりました。 日本なら保険が適用されるケースもありますが、こちらではもちろん全額自己負担。請求額を見て、本当に目が飛び出るかと思いました。虫歯1本の治療に、日本円で数万円以上かかることも珍しくありません。 この“痛い”経験から、「数ヶ月に一度、予防のために数千円を投資すること」が、将来の何十万円という出費を防ぐ、最も賢い自己投資なのだと心から学びました。 【習慣4】美意識の高さの表れ。「審美歯科」をポジティブに選択する文化 オーストラリアでは、歯の健康はもちろん、「歯の美しさ」に対する意識も非常に高いです。それは単なる見た目の問題ではなく、文化的な価値観が深く関わっています。 「八重歯はドラキュラ?」歯の見た目がキャリアを左右する社会 日本では「チャームポイント」や「かわいい」と言われることもある八重歯。しかし、欧米では「ドラキュラの歯」を連想させるなど、ネガティブなイメージを持たれることが少なくありません。 整った歯並びや白い歯は、清潔感や自己管理能力の高さを示す指標と見なされます。ビジネスシーンやプライベートな人間関係においても、口元の印象がその人の評価に影響を与えることがある、というのがこちらの社会のリアルな感覚です。 話題の”Buzz Cut Zirconia”とは?最新審美トレンド 現地では、人々はもっと気軽に、ファッション感覚で審美歯科を活用しています。例えば、ジルコニアという丈夫で見た目も自然な素材を使ったセラミック治療は常に進化しており、より美しく、より長持ちする治療法が次々と登場しています。 また、歯科医院で行うオフィスホワイトニングだけでなく、自宅で手軽にできるホームホワイトニングも非常にポピュラーです。「歯をきれいにする」という選択が、自分をポジティブに表現する手段の一つとして、文化に溶け込んでいるのです。 【習慣5】歯科衛生士は「お口のパーソナルトレーナー」。専門家との新しい付き合い方 最後の習慣は、私たち専門家との付き合い方についてです。オーストラリアでは、歯科衛生士は「歯の掃除をしてくれる人」以上の存在として認識されています。 オーストラリアにおける歯科衛生士の役割と地位 オーストラリアの歯科衛生士は、予防ケアの主役です。患者さん一人ひとりのリスクを評価し、最適なケアプランを立て、食事指導や生活習慣のアドバイスまで行います。 まさに、お口の健康を守る「パーソナルトレーナー」のような存在。専門家として高い社会的地位が確立されており、歯科医と対等なパートナーとして、チームで患者さんの健康を支えています。 日本でも実践!「かかりつけ衛生士」を持つメリット この考え方は、日本でもぜひ取り入れてほしいと願っています。歯科医院に行ったら、ぜひ信頼できる歯科衛生士さんを見つけて、「かかりつけ」になってもらいましょう。 長期的に同じ担当者に見てもらうことで、あなたの口腔内の小さな変化にも気づいてもらいやすくなります。「どの歯ブラシが合っていますか?」「最近、歯茎から血が出やすいんです」など、どんな些細なことでも相談してみてください。 あなたに合った専門家を見つけ、二人三脚で口腔ケアに取り組むこと。それが、デンタルIQを高める上で、実は一番の近道なのかもしれません。 よくある質問(FAQ) Q: オーストラリアの歯科治療費は、なぜそんなに高いのですか? A: 主な理由は、日本のような国民皆保険制度が歯科治療の多くをカバーしていないため、治療費が全額自己負担となるからです。そのため、虫歯1本の治療でも数万円以上かかることが珍しくありません。この経済的背景が、人々を「治療より予防」へと向かわせる大きな動機になっています。 Q: ウォーターピックを使えば、フロスは全く必要ないですか? A: 理想は併用です。ウォーターピックは歯周ポケットや歯茎のケアに非常に効果的ですが、歯と歯が接する面の粘着性の高いプラーク(歯垢)を物理的にこすり落とす力はフロスに軍配が上がります。元歯科衛生士としては、ウォーターピックで大まかな汚れを流し、フロスで仕上げる「ダブルケア」をおすすめします。 Q: 高濃度のフッ素入り歯磨き粉は、毎日使っても安全ですか? A: はい、6歳以上であれば適切な使用量を守ることで安全かつ効果的に使用できます。オーストラリアを含む多くの国では1500ppmが標準濃度とされており、健康への悪影響は報告されていません。ただし、飲み込まないように注意し、使用後は少量の水で1回だけすすぐのがフッ素の効果を高めるコツです。 Q: 子供のデンタルIQを高めるために、オーストラリアではどんな教育をしていますか? A: オーストラリアでは幼少期から「歯は一生の財産」という教育が徹底されています。学校での歯科検診や歯磨き指導はもちろん、多くの家庭で定期検診が習慣化されています。また、子供向けの歯科専門医も多く、歯医者へのポジティブなイメージを育む工夫がされています。 Q: 日本でオーストラリアのような予防歯科を受けるには、どうすれば良いですか? A: まずは「予防歯科」を掲げている歯科医院を探し、定期検診とクリーニングの相談をすることから始めましょう。担当の歯科衛生士に自分の口腔リスクや最適なケア方法について質問し、パーソナルトレーナーのように頼ることが大切です。この記事で紹介した習慣を実践し、デンタルIQを高めていくことも重要です。 まとめ メルボルンの日常から見えてきた、デンタルIQを高める5つの新習慣、いかがでしたか? ウォーターピックの活用 高濃度フッ素1500ppmの歯磨き粉選び 3ヶ月に1度のプロの掃除 ポジティブな審美歯科の選択 歯科衛生士をパーソナルトレーナーに これらは単なるテクニックではなく、「自分の健康は自分で守る」という文化そのものです。私自身、海外での高額治療という痛い経験を経て、予防の価値を誰よりも実感しています。 この記事が、皆さんのデンタルIQを高め、世界基準の視点でご自身の口腔ケアを見直すきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。 まずは一つでも、新しい習慣を取り入れてみませんか?あなたの選択肢は、もう日本国内だけではないのですから。 関連記事: インプラントの寿命を最大化する秘訣:維持から再手術までの全知識 「歯医者さん、怖くないよ!」 歯科衛生士が教える、リラックスして治療を受けるコツ 歯医者さんとの対話:患者さんの”よくある質問”に答えます 意外と知らない?歯医者さんが本当はしてほしい5つのこと コラム