トラブル回避の鍵はコレ!歯科医院で上手にコミュニケーションを取る方法 aichido, 2025年3月25日2025年3月25日 最終更新日 2025年3月25日 by aichido 「痛くないと言われたのに、すごく痛かった…」 「説明されていた治療費と、実際の請求額が違った…」 「何をされているのか、全く理解できないまま治療が進んでいった…」 歯科医院での治療について、こんな不満や戸惑いを抱えた経験はありませんか? 実は、多くの歯科トラブルはコミュニケーションの齟齬から生まれているのです。 私は歯科ジャーナリストとして25年以上、数百の歯科医院を取材してきました。 そこで気づいたのは、医療者と患者の間には「見えない壁」が存在していることです。 壁の向こう側には専門知識と豊富な経験を持つ医療スタッフがいます。 しかし、その専門性の高さが逆に患者とのコミュニケーションを難しくしている現実があります。 この記事では、患者の立場から歯科医院とのコミュニケーションを円滑にし、トラブルを未然に防ぐための実践的な方法をご紹介します。 専門知識と現場感覚を融合させた、他では得られない独自の視点をお届けします。 良好な歯科治療には「良好なコミュニケーション」が欠かせません。 これから紹介するヒントを活用し、あなたの歯科体験をより快適で満足度の高いものに変えていきましょう。 目次1 歯科医院で起こりやすいコミュニケーショントラブル1.1 医療用語や治療内容への理解不足が招くミスマッチ1.2 不安や恐怖感が高まることで生じる誤解1.3 費用・時間に対する誤認識や情報不足2 トラブルを回避するための基本的なコミュニケーション戦略2.1 初期カウンセリングの重要性と情報共有のコツ2.2 専門用語を「噛み砕く」ことで得られる安心感2.3 聞き手に回る:患者が自分の言葉で語る場の作り方3 現場で役立つ具体的アプローチと実例3.1 患者の背景を把握するヒアリングシートの活用3.2 インフォームド・コンセントを徹底するためのステップ3.3 スタッフ同士の連携強化:多職種チームでの情報共有4 信頼関係を深めるための配慮とテクニック4.1 表情・声のトーン・アイコンタクトの意識づけ4.2 患者の治療体験をプラスに変える「ちょっとした気づかい」4.3 フォローアップ連絡で不安を解消し、長期的な信頼を築く5 まとめ 歯科医院で起こりやすいコミュニケーショントラブル 歯科医院でのトラブルは、ささいな誤解から始まることが少なくありません。 現場で実際に起きている典型的なコミュニケーショントラブルを、具体的な事例とともに見ていきましょう。 医療用語や治療内容への理解不足が招くミスマッチ 「インレー」「クラウン」「スケーリング」――歯科医院では専門用語が飛び交います。 患者がこれらの用語を正確に理解していないと、治療内容のミスマッチが起きてしまうのです。 Aさん(42歳・会社員)の事例: 「虫歯の治療で来院したところ、医師から『インレーで修復しましょう』と言われました。何となく同意したものの、実際には何をするのか理解していませんでした。後から『金属がずっと入ったままになる』と知って、セラミックを希望していた私にとっては大きなショックでした」 このケースでは、「インレー」という言葉の意味や材質の選択肢について事前に説明があれば、患者の希望とのミスマッチを防げたはずです。 統計によると、歯科治療における患者の不満の約40%は「治療内容の説明不足」に起因しているというデータもあります。 不安や恐怖感が高まることで生じる誤解 「歯医者嫌い」は珍しくありません。 日本人成人の約30%が「歯科恐怖症(デンタルフォビア)」の傾向があるとされています。 この不安や恐怖感が、医療者の言葉を正確に理解する妨げになることがあるのです。 Bさん(35歳・主婦)の事例: 「親知らずの抜歯の説明を受けたとき、恐怖で頭が真っ白になってしまいました。医師の説明はほとんど耳に入らず、『痛みが2〜3日続く可能性がある』という言葉だけが強調されて記憶に残りました。実際には『多くの場合は痛みがほとんどない』という説明もあったようですが、まったく覚えていませんでした」 不安状態では、ネガティブな情報だけが選択的に記憶に残りやすくなります。 これが医療者と患者の認識の乖離を生み出す原因になっているのです。 費用・時間に対する誤認識や情報不足 歯科治療において費用と時間は重要な要素です。 しかし、これらの情報が不明確なままだと、後々のトラブルにつながります。 Cさん(58歳・自営業)の事例: 「入れ歯の相談で来院し、『保険適用で作れます』という説明を受けました。しかし実際の治療過程で追加の処置が必要になり、最終的には当初の見積もりよりかなり高額になりました。なぜ最初にそのリスクについて説明がなかったのか、不信感を抱いてしまいました」 このようなケースは非常に多く見られます。 治療計画の変更可能性や、それに伴う費用の変動リスクについて、初期段階での丁寧な説明が必要です。 また、治療期間についても「全部で何回通院が必要か」「完了までどのくらいかかるか」という見通しが共有されないことで、途中でのドロップアウトや不満につながることがあります。 トラブルを回避するための基本的なコミュニケーション戦略 歯科医院での治療をスムーズに進めるには、いくつかの基本的なコミュニケーション戦略が役立ちます。 ここでは具体的な手順とともに紹介します。 初期カウンセリングの重要性と情報共有のコツ まず、新しい歯科医院を訪れる際には、初期カウンセリングを重視しましょう。 このステップを丁寧に行うことが、その後の治療をスムーズに進めるカギとなります。 初期カウンセリングで実践すべきこと: 事前に自分の症状や気になる点をメモしておく 過去の治療歴や服用中の薬がある場合は、必ず伝える 予算や時間的な制約があれば、最初に相談する 説明を受けたらその場でメモを取る習慣をつける 不明点は「後で調べます」と曖昧にせず、その場で質問する 特に重要なのは、治療の選択肢がある場合、それぞれのメリット・デメリットを比較できる情報を求めることです。 「他にどんな方法がありますか?」「それぞれのメリット・デメリットは何ですか?」という質問は非常に有効です。 また、治療計画が決まったら、全体の流れを図や表で示してもらうよう依頼するのも良い方法です。 視覚的な情報は記憶に残りやすく、治療の進行状況を自分でも把握しやすくなります。 専門用語を「噛み砕く」ことで得られる安心感 歯科医療は専門用語の宝庫です。 この言葉の壁を越えるために、以下の方法を実践しましょう。 専門用語への対処法: 分からない用語が出てきたら、すぐに「その言葉の意味を教えていただけますか」と質問する 医師の説明を自分の言葉で言い換えて確認する(「つまり、〇〇ということですね?」) スマートフォンなどのメモ機能を活用し、専門用語とその意味をその場で記録する 必要に応じて図や模型で視覚的に説明してもらう 例えば、「根管治療」と言われたら、「それはどういう処置なのか、どのような目的で行うのか」を具体的に教えてもらいましょう。 「歯の神経を取り除いて、中を消毒し、薬を詰める治療」といった具体的な説明を求めることで、理解が深まります。 実際、私の取材経験では、治療内容を理解している患者さんほど、治療に対する不安が少なく、満足度も高い傾向にあります。 聞き手に回る:患者が自分の言葉で語る場の作り方 良好なコミュニケーションには「聞く」姿勢も重要です。 医療者に対して自分の症状や希望を適切に伝えるためには、以下のポイントを意識しましょう。 効果的な伝え方: 症状については「いつから」「どんなとき」「どの程度」という要素を含めて具体的に伝える 痛みの強さを「10段階中の〇」のように数値化して表現する 自分の希望や懸念を率直に伝える(「見た目を重視したい」「痛みに不安がある」など) 話をする前に整理してメモを用意しておく 医療者から「他に何か心配なことはありますか?」と質問されたときは、小さな疑問でも遠慮せずに伝えましょう。 「些細なことかもしれませんが…」と前置きしてから質問するのも一つの方法です。 私がインタビューした歯科医師からは「患者さんが遠慮なく質問してくれると、こちらも適切な説明がしやすい」という声をよく聞きます。 質問することは決して「面倒な患者」になることではなく、むしろ治療をスムーズに進めるための重要なステップなのです。 現場で役立つ具体的アプローチと実例 歯科医院でのコミュニケーションを改善するための実践的なツールや方法をご紹介します。 これらは実際の歯科医院で効果が実証されている具体的なアプローチです。 患者の背景を把握するヒアリングシートの活用 多くの歯科医院では初診時に問診票の記入を求められますが、標準的な項目だけでは不十分なことがあります。 より効果的なコミュニケーションのために、独自の「ヒアリングシート」を活用するのがおすすめです。 ヒアリングシートに含めるべき項目 カテゴリー記入すべき内容治療の優先順位□痛みの除去 □機能回復 □見た目の改善 □予防 □その他( )不安要素□痛み □費用 □時間 □麻酔 □音 □その他( )過去の経験良かった点・悪かった点を具体的に希望する説明の詳しさ□詳細に知りたい □概要だけでよい □必要最低限でよい予算の目安□保険内のみ □〜5万円 □〜10万円 □予算の制限なし このようなシートを自分で準備し、初診時に医院に提出したり、カウンセリング時に参照したりすることで、医療者側も患者の希望や懸念を的確に把握できるようになります。 実際に私が取材した渋谷区の歯科医院では、独自のヒアリングシートを導入したことで、患者満足度が20%以上向上したというデータもあります。 インフォームド・コンセントを徹底するためのステップ 「インフォームド・コンセント」とは、治療の内容を十分に理解した上で同意することを指します。 これを確実に行うためには、以下のステップを意識しましょう。 インフォームド・コンセントの5ステップ 情報収集: 治療の選択肢、それぞれのメリット・デメリット、費用、期間などの情報を集める 理解確認: 説明内容を自分の言葉で言い換えて、理解度を確認する 疑問解消: 不明点や疑問を洗い出し、すべて解消する 熟考期間: 重要な決断は、その場で行わず、熟考する時間を持つ 同意表明: 十分な理解と納得の上で、書面で同意する 特に複雑な治療や高額な自費診療の場合は、「今すぐに決める必要はありますか?」と尋ね、一晩考える時間を持つことも重要です。 焦らずに判断することで、後悔のない選択ができます。 東京医科歯科大学の研究によると、十分なインフォームド・コンセントが行われた患者は、治療結果への満足度が有意に高いという結果が出ています。 スタッフ同士の連携強化:多職種チームでの情報共有 現代の歯科医院は歯科医師だけでなく、歯科衛生士、歯科助手、受付スタッフなど多職種で構成されています。 このチーム医療の中で情報が共有されていないと、患者は混乱することがあります。 効果的な情報共有のために患者ができること 医師に話した内容を他のスタッフにも簡潔に伝える 「前回の治療で○○と説明を受けました」と過去の説明を参照する 治療記録や説明書のコピーを依頼し、自分でも保管する 予約時に「前回の続きの治療です」「新たな症状の相談です」など目的を明確に伝える 例えば、歯科医師から受けた説明を歯科衛生士が把握していないケースがあります。 そのような場合は「先生からはこのように説明を受けたのですが…」と橋渡しの役割をすることで、情報の断絶を防ぐことができます。 また、複数の歯科医院にかかっている場合は、それぞれの医院での治療内容を必ず伝えることも重要です。 これにより、治療の重複や矛盾を避けることができます。 信頼関係を深めるための配慮とテクニック 歯科治療の成功には、医療者と患者の間の信頼関係が不可欠です。 ここでは、その信頼関係を深めるための具体的な配慮とテクニックを紹介します。 表情・声のトーン・アイコンタクトの意識づけ • 治療中はマスクとゴーグルで医師の表情が見えないことが多いため、声のトーンやアイコンタクトが重要になります。 • 質問するときは、体を少し起こして医師と目線を合わせると、より真剣に聞いてもらえる傾向があります。 • 痛みを感じたときは、約束した合図(手を挙げるなど)をすぐに出すことが大切です。 痛みを我慢してしまうと、医師は「問題ない」と判断してしまいます。 • 治療後の感想や質問は、診療チェアから立ち上がる前に伝えるのがベストです。 立ち上がってしまうと、次の患者への準備が始まり、十分な対応が難しくなることがあります。 • 不安や緊張が強い場合は、最初にそのことを伝えておくと、医師も配慮した対応をしてくれることが多いです。 「歯科治療に対して不安があります」と正直に伝えることから始めましょう。 患者の治療体験をプラスに変える「ちょっとした気づかい」 • 治療前に質問したいことがある場合は、受付時に「先生に相談したいことがあります」と伝えておくと、時間を確保してもらいやすくなります。 • 歯科医院によっては音楽を流していることがあります。 BGMが気になる場合や、逆に好みの音楽を聴きたい場合は、遠慮なく伝えてみましょう。 • 長時間の治療の場合は、途中で休憩を入れてもらうことも可能です。 「30分経ったら少し休憩をいただけますか」と事前に依頼しておくとよいでしょう。 • 治療後の注意点をメモしたり、スマートフォンで撮影させてもらうことで、自宅でも確認できるようにしておきましょう。 • 感謝の気持ちを伝えることも大切です。 「丁寧に説明してくださってありがとうございます」という一言で、医療者のモチベーションも高まります。 フォローアップ連絡で不安を解消し、長期的な信頼を築く • 治療後に不安や疑問が生じた場合は、すぐに歯科医院に連絡することが重要です。 多くの歯科医院では、治療後のフォローアップを歓迎しています。 • 電話での相談時は、いつ治療を受けたか、どのような処置だったかを最初に伝えると、スムーズな対応が期待できます。 • 定期検診の際には、前回からの変化や気になる点を伝えることで、早期発見・早期治療につながります。 • 他の医院での治療を受ける場合も、正直に伝えることが重要です。 「セカンドオピニオンを求めたい」という希望は、多くの医師が尊重してくれます。 • 長期的な関係を築くためには、定期検診を欠かさないことがポイントです。 半年に一度の検診を通じて、顔の見える関係を維持しましょう。 歯科医院での信頼関係は一朝一夕には築けませんが、これらの小さな積み重ねが、長期的な良好な関係構築につながります。 そして、その信頼関係こそが、良い治療結果をもたらす重要な要素なのです。 まとめ 歯科医院でのコミュニケーションは、治療の成功に直結する重要な要素です。 ここで紹介した方法を実践することで、トラブルを未然に防ぎ、満足度の高い治療体験へとつなげることができます。 コミュニケーション改善のための5つのポイント 事前準備: 症状や質問をメモしておき、初期カウンセリングを重視する 情報収集: 治療の選択肢、メリット・デメリット、費用、期間などの情報を積極的に求める 理解確認: 専門用語は噛み砕いて説明してもらい、自分の言葉で言い換えて確認する 不安の共有: 不安や懸念を隠さず伝え、解消するための具体的な方法を医師と一緒に考える 継続的な関係: 定期検診を通じて長期的な信頼関係を築く 歯科治療は、患者と医療者の協働作業です。 一方的に「してもらう」ものではなく、双方が情報と認識を共有し、共通の目標に向かって進む過程なのです。 私は歯科ジャーナリストとして25年以上、数多くの歯科医院を取材してきました。 その経験から言えることは、コミュニケーションがうまくいっている医院ほど、患者の満足度が高く、治療結果も良好だということです。 「言いたいことが言えない」「聞きたいことが聞けない」という状況は、どちらにとっても不幸なことです。 この記事で紹介した方法を実践し、より良い歯科体験を手に入れてください。 あなたの「健康な歯と笑顔」のために、今日からコミュニケーションを見直してみませんか? それが、歯科トラブルを回避するための最も確実な一歩となるはずです。 関連記事: インプラントの寿命を最大化する秘訣:維持から再手術までの全知識 「歯医者さん、怖くないよ!」 歯科衛生士が教える、リラックスして治療を受けるコツ 歯医者さんとの対話:患者さんの”よくある質問”に答えます 意外と知らない?歯医者さんが本当はしてほしい5つのこと コラム